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    学問に対する冒とく行為だ/「学者の会」が抗議声明/学術会議会員の任命拒否

     日本学術会議が推薦した会員6人の任命を菅義偉首相が拒否したことについて、「安全保障関連法に反対する学者の会」は10月14日、抗議声明を発表した。任命拒否(見送り)は違法行為だとし、(1)見送りの理由と経過を十分に明らかにすること(2)速やかに任命すること――を求めている。

     日本学術会議法は3条で政府からの独立をうたい、7条で総理大臣による任命権を制約している(任命は学術会議の推薦に基づくこと)。声明はその背景に「戦前戦中の国家による学問思想統制に対する反省」があると指摘。「会員の選考に政治が介入することはどの国においてもあってはならず、学問に対する冒とく行為だ」と厳しく批判した。

     

    〈写真〉会見で佐藤学学習院大学特任教授は「学者は真理の追究と論理については絶対に妥協しない」と語った(10月14日、都内)

     

    損失受けるのは国民/学術会議問題で学者ら

     「安全保障関連法に反対する学者の会」は10月14日、日本学術会議会員6人の任命拒否について会見を開き、メンバーが見解を述べた。

     浅倉むつ子早稲田大学名誉教授は若い研究者への影響について「今は任期制の研究者が多く、再任に当たって反体制的な団体や声明に参加しているかを聞かれれば萎縮効果を生む」と懸念。政府の言いなり社会になれば、発展は望めないと強調した。

     大沢真理東京大学名誉教授は「学問は『これっておかしいんじゃないの?』という疑問を出発点にして進めるもの。そこを封殺すれば(学問は発展せず)国民が損失を受ける」とした。

     

    ●これが文明国家なのか

     

     山口二郎法政大学教授は「一国の政策を決める作業は知的であるべきだ」と述べ、以前は学者と政府がともに知的作業を行っていたと指摘。「いまやその関係は崩壊した。野蛮人がエビデンス(科学的根拠)もなく、論理的な説明もできない政策をつくり、それに学者が抗議したら、今度は野蛮人が知的世界を壊しにかかってきたということ」と憤った。

     小熊英二慶応義塾大学教授は「任命しない理由を明らかにしないことが許されるならば、不透明な差別の温床になる」と語った。性的指向や宗教、国籍、地域などどんな理由でも差別できてしまうことになるという。その上で「権力も法の支配に従わなければならないというのが文明国(のルール)だ。(今回の任命拒否は)それを破ることになる」。