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    「除染作業は法の趣旨に沿わず」/技能実習生の訴訟が和解/福島地裁支部が「考え方」示す

     元外国人技能実習生が、実習計画と関係のない放射線の除染作業に従事させられたとして、実習先の会社に損害賠償などを求めていた訴訟が福島地裁郡山支部で和解した。会社は合計171万円の解決金を支払う。弁護団や全統一労働組合などの支援者が10月29日、都内で会見を開き、明らかにした。

     原告はベトナム人男性3人で、鉄筋施工と型枠施工の技能実習のため2015年7月に来日。福島第一原発事故による放射線の除染作業や一般立ち入りが禁止されていた浪江町での水道配管工事に16年3月から約2年間、従事させられた。

     福島地裁郡山支部は8月6日に和解を勧告し、解決金の根拠となる「考え方」を明記した。実習制度は帰国後、習得した技能の業務に従事することが予定されているが、除染作業は一般的に海外で行われていない上、特別な教育が必要であり、制度の趣旨や目的に沿わないと指摘。除染作業の労働者と同水準の賃金が求められるとして、給与日額の差額分と技能習得の機会を損なった慰謝料(解決金)を支払うべきと結論付けた。

     原告側代理人の中村優介弁護士は、コロナ禍で証人尋問のための来日が困難なことなどを考慮し、早期解決のために和解を受け入れたと説明した。和解に向けた裁判所の「考え方」について「賃金の差額分の損害賠償を認める判断を示すなど、判決文に近い内容。書面化した意義は大きい」と評価。その上で、「技能実習制度は(技能移転の)建前と(労働力確保の)本音が乖離(かいり)しており、人権侵害の温床になっている」と批判し、実習制度は廃止すべきと訴えた。

     

    〈写真〉会見する中村弁護士(中央、10月29日、都内)