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    格差是正めざす社会運動を/労契法20条裁判/有志がオンラインイベント

     有期雇用労働者への不合理な格差を禁止する労働契約法20条裁判の原告や弁護士らによるリレートークが12月9日、オンラインで開催された。呼びかけ人は、官製ワーキングプア研究会の白石孝理事長、ジャーナリストの竹信三恵子氏、笹山尚人弁護士。最高裁判決にとらわれることなく、格差是正の実現に向け、社会運動を広げようと語り合った。

     最高裁は日本郵便、大阪医科薬科大学、メトロコマースの各事件について10月に判決を出した。扶養手当や有給の病気休暇などの不支給は不合理としたものの、賞与と退職金の支給を一切認めなかった。

     賞与の不支給は不合理と訴えていた大阪医科薬科大事件の原告は「有期雇用の賞与はゼロでいいとお墨付きを与えた最高裁はひどい。この判決を踏まえて野党4党によるパート・有期法の改正案が国会に提出され、少し前進させることができたと思う。次の運動につなげていきたい」と語った。

     同弁護団の鎌田幸夫弁護士は、最高裁は正社員中心の雇用制度の考え方が根強いと指摘した。「全体の約4割を占める非正規雇用は、年金などで退職後の人生も格差が続く。最高裁は(収入が大きい)賞与や退職金の問題を放置せずに是正を示すべきだった。『正社員は厳しい入社試験をパスしたから、格差は当然』などという世論も見越して労働者の分断を事実上、黙認する判決を出したのではないか」と述べ、労働者全体の団結が最大の課題だと訴えた。

     

    ●日本は差別に鈍感

     

     国際的な視点から龍谷大学の脇田滋名誉教授が発言した。欧州では新自由主義がもたらした格差と貧困を是正する動きが90年代以降に起こり、国際労働機関(ILO)のパートタイム労働条約(175号、日本は未批准)や非正規雇用に関する三つのEU指令が出されたという。「均等待遇の原則が整備されてきたが、日本の裁判官や労働行政は、非差別の世界的な動向に鈍感で、学習していない。組合の取り組みも不十分だ」と厳しく批判した。

     その上で「韓国では組合の産別化を図り、企業を越えた同一労働同一賃金の実現に向け、欧州型の職務給の研究も進んでいる」と紹介。日本の状況を踏まえた上で、改善に取り組む必要があると強調した。

     

    〈写真〉オンラインと会場併せ約60人が参加。ドイツからの参加もあった(12月9日、都内)