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    崖っぷち生活、もはや限界/コロナ禍の年末年始/労組や市民団体が支援活動

     新型コロナウイルス感染拡大の第3波が広がる中、仕事を失い、住まいをなくした人々を支援する活動が年末年始、各地で行われた。東京・新宿では、労組や市民団体が連携して「コロナ被害相談村」を開設。食料配布をはじめ、生活相談、公的支援につなぐ取り組みが進められた。暮らしの崩壊をどう食い止めるのか、年明けの今も模索が続く。

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     深まる孤独 「以前から、年末年始の炊き出しなどは見聞きしていたけど、自分がこんなことになるとは思ってなかった」と語るのは、IT関係の中小企業を2020年6月に解雇された38歳の男性だ。失業給付だけでは足りず、電気を止められたままの独り暮らし。持病もある。食事は3日に一度の時も。労働組合などの「相談村」に来てやっと「なんとか生活を立て直せるかもしれない」と話した。

     情報弱者である在日外国人の相談も相次いだ。ミャンマーから2006年に来日したという男性は、難民申請が認められず、仕事も失い、ここ2年間は都内の公園で一人、野宿。支援者によると「これまでは同郷の仲間からお金や食べ物をもらっていたが、その人たちもコロナで苦しくなり離れていってしまった」という。相談を経て当面の住まいを確保し「温かく守ってもらってうれしい。ありがとう」と笑顔で語った。

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     女性を直撃 08~09年の年越し派遣村では、訪れた約500人のうち、女性は5人だった。男性中心の製造業派遣で職と住居を失った人が多かったためだ。今回は飲食や観光をはじめ幅広い業種がコロナの影響を受け、女性の非正規労働者を直撃した。

     支援団体は女性専用の相談ブースや部屋を確保、プライバシーに配慮するなどして対応した。「コロナで仕事が減り、15万円あった月収が8万円に」(40代のフリーランス)、「週1~2回の仕事だが、それもなくなりそう。月収は3万円。もう生活保護しかない」(40代の独身)などの状況が訴えられた。

     小学校1年生の娘と暮らすシングルマザーの女性はスーパー勤めで、月収は7万円。20年5月から家賃が払えなくなったという。自治体などの家賃補助を受けているが、「支援といっても先が見えない。延長や追加の方向がはっきりすれば安心できるんだけど」

     女性の相談は日を追うごとに増えていった。

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     連帯の力で 12月29日と30日、1月2日の3日間、東京・新宿の大久保公園では「コロナ被害相談村」が取り組まれた。労働組合と日本労働弁護団などが呼び掛け、連合や全労連、全労協をはじめとする労組、反貧困ネットワークなどの市民グループからボランティア350人が駆け付けた。

     相談に訪れた人は337人(女性57人)で、東京都が行う一時的な宿泊場所提供の事業につなぐことや、生活相談、食料配布などを行った。

     実行委員会は「コロナの終息は見えず、今後、仕事や住まいを失い困窮する人々は増える」とみている。労働弁護団の棗一郎闘争本部長は「これで支援活動を終わらせるわけにはいかない。労組は市民グループと連携して、こうした社会的運動に取り組むことが求められている」と語った。

     

    〈写真〉年末年始の3日間、取り組まれた「コロナ被害相談村」(12月29日、東京・新宿)