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    長時間過密労働の解消訴え/全教/生活権利討論集会を開催

     全日本教職員組合は1月23~24日、生活権利討論集会をオンラインで開催した。公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を導入可能にする条例が北海道と徳島県で制定された事態を重く受け止め、導入阻止の取り組みを重要課題に位置付けた。長時間過重労働の抜本的な解消も訴えた。

     基調報告で吹上勇人生権・法制局長は、課題として(1)長時間過密労働の解消と1年単位の変形労働時間制(変形労働制)の導入阻止(2)コロナ禍の下での労働安全衛生活動の前進(3)臨時・再任用教職員などの処遇改善(4)21国民春闘への結集――を提起した。

     変形労働制の条例制定と職場への導入を阻止する運動の再構築が必要と強調。「時間外労働月45時間の上限が今年度から適用されたが、勤務時間を虚偽報告させるハラスメントが横行している」と指摘。変形労働制を導入する前提の「時間外月42時間以下」の状況が整っておらず、精神疾患による休職者数が過去最多を記録し、離職者も増えていることも報告した。

     

    ●1年変形制の阻止へ

     

     分科会では1年単位の変形労働時間制をテーマに議論。全国に先駆けて条例を制定した北海道と徳島県では、当事者である教員への意向調査がないがしろにされているという批判が相次いだ。

     京都教職員組合の中野宏之書記長は、府教育委員会との確認書を紹介。公立学校教員の残業の扱いを定めた給特法が制定された72年のもので、休日の学校行事などで勤務時間を割り振る際に変形労働制を採用しないと明記。現在も労使合意は有効で、交渉の都度、確認しているという。「変形労働制は、育児や介護への配慮であたかも個人で選択できるかのようにいわれているが、導入は職場単位。職場の問題として主張しなければならない」と指摘した。

     変形労働制は夏休み期間に5日程度の休日まとめ取りがメリットとして掲げられているが、京都府では約20年前から夏休み期間に学校閉庁日を実施している。その前後に年次有給休暇の取得を集中させる教員が多いため、新たな休日まとめ取りの余地はなく、年休取得日が減る可能性もあるという。

     京教組青年部では一昨年、名古屋大学の内田良准教授を招いた学習会をきっかけに、変形労働制の導入をやめるよう校長への申し入れや府教委交渉で要望に取り組むようになった。「子育て世代が多く、これ以上勤務時間が伸びれば、生活時間がなくなる危機感がある」と述べ、若い世代の取り組み参加に期待を寄せる。

     公立学校の教員の場合、変形労働制の導入に労使協定は不要とされているが、事務職員を対象にした36協定では、非常勤職員を含めた職場全体での労働者代表選出が必須だ。中野書記長はこの点を生かした取り組みを提起。「(労働時間規制を外す)法律の仕組みは36協定も変形労働制も一緒。なぜ、教員の変形労働制だけ労使協定が不要なのか、議論を促したい。労働者の意向を主張する必要がある。不利益を被るのは労働者だ」と訴え、職場での積極的な労使交渉を呼びかけた。