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    沖縄レポート/民意無視はいつまで続く/政治の季節の始まりに考える

     コロナ禍に、沖縄もあえいでいる。1月20日から沖縄県独自の緊急事態宣言による営業時間の短縮と外出自粛要請が始まった。観光の比重が大きいだけに、経済への打撃はますます深刻だ。

     そんな中でも辺野古新基地の工事は続いている。大浦湾の軟弱地盤のための設計変更申請を玉城デニー沖縄県知事は承認しない構えで、審査に時間をかけている。承認がないのに、政府は設計変更を前提にした来年度予算を組んだ。沖縄の民意は断固として無視するという意思表示だ。

     

    ●宮古島で市長選勝利

     

     そんな沖縄は、来年の知事選に向け政治の季節が始まっている。その初戦と位置付けられた宮古島市長選(1月17日投開票)は、自公が推す現職・下地敏彦氏を、玉城知事と国政野党、そして保守の一部が推す元自民党県議の新人・座喜味一幸氏が破った。座喜味氏の得票は1万5757票で、下地氏との2782票差はかなり大きいと言っていい。

     この選挙は、さまざまな意味で現在の沖縄政治を象徴していた。一つは、久々の「オール沖縄」の勝利である。故翁長雄志前知事が保守の一部と革新勢力を結合させた「オール沖縄」は、最近の県内首長選挙では、普天間飛行場のある宜野湾市、辺野古のある名護市など、重要選挙の多くで敗れてきた。

     今回も、自民党は菅首相の秘書や大物議員を投入して必勝を期したが、上滑りに終わった。沖縄の衆議院4選挙区のうち唯一自民党が議席を持つ4区の中で、宮古島市は自民党勝利の鍵を握る。市政転換は、秋までに行われる衆院選の行方にも関わりそうだ。

     

    ●複雑な陸自配備問題

     

     もう一つ、今回重要な点は、陸上自衛隊配備問題が争点にならなかったことである。勝利した座喜味氏は元自民党県議で、陸自配備を容認しており、「知事と連携し国に説明を求めていく」という玉虫色の政策で選挙に臨んだ。

     一方、同時に実施された市議補選では、欠員2に対し5人が立候補し、陸自配備反対を掲げた女性候補がトップの1万57票で当選した。投票総数の3分の1を超えており、この票数が陸自配備反対の民意を示している。陸自問題にどう向き合っていくのかは、玉城県政にとっても難しい課題となる。

     この先2月7日に浦添市長選、4月25日にうるま市長選がある。どちらもオール沖縄勢力が候補者を一本化し市政奪還を目指す。浦添は3選を目指す現職に、共産党市議から転じた38歳の女性が無所属で挑む。うるま市は保守の牙城だが、現職が病気を理由に引退するため、自民推薦の55歳元市議と「オール沖縄」の68歳大学教授の新人同士の一騎打ちとなっている。

     浦添市長選は那覇軍港移設問題が争点だ。軍港の浦添への移設について、共産党などは移設なしの無条件返還を一貫して主張してきた。しかし、翁長県政を引き継いだ玉城県政も「オール沖縄」市長の那覇市も、浦添移設を進める立場だ。陸自問題とともに「オール沖縄」内部のねじれとなっており、県議会でも自民党から追及されてきた。今選挙でも弱点となろう。

     

    ●日本の一人一人に問う

     

     基地反対の民意が固い沖縄だが、選挙で勝利するためにはさまざまな妥協、苦渋の選択が迫られる。加えて、常に政権が露骨に介入し、地域を分断する。そして、政権の意に反する結果が出てもそれは無視される。いつまでこんな状態が続くのか。遠い沖縄の小さな選挙ではあるが、「日本に住む一人一人にも責任はありませんか?」――そう問いたくなる。(ジャーナリスト 米倉外昭)