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    〈グローバル化の陰で〉(2)/米国企業は何を狙っているか/日米2国間の貿易協定交渉/広範な分野でのルール変更?

     日本など11カ国による環太平洋連携協定(TPP11、CPTPP)と日欧の経済連携協定(EPA)が昨年末から今年2月にかけて相次ぎ発効した。今、日本にとって目前に迫る課題は、米国との2国間の貿易交渉だ。
     昨年9月、安倍首相とトランプ大統領が貿易交渉の開始に同意して以降、米国は国内のビジネス界や市民からもパブリックコメントの募集や意見聴取を行い、着々と交渉に向けての準備を進めてきた。米国は日本との貿易交渉の中で、農産物関税の撤廃はもちろん、非関税障壁の撤廃や投資ルールなど幅広い分野でのメリット獲得を目指している。つまり、30章にも及ぶTPPや日欧EPAとほぼ同じ分野の協定を想定しているのである。
     一方、日本は首脳会談の直後から「物品に限った協定であり、TAG(物品貿易協定)という」と強弁している。当然、情報公開や意見聴取の機会もなく、とにかく米国から自動車の高関税措置をかけられないよう防御するので精一杯の状態だ。

    ●日本への要望リスト

     米国通商代表部(USTR)が行ったパブコメや企業からの意見聴取、そしてUSTRが公表した「日米貿易交渉の目的」から、米国企業が日本に求めること、すなわち米国が交渉で要求してくるだろう内容を分析してみた。
     ◆農産物 米、麦、大豆、トウモロコシ、牛肉・豚肉・鶏肉、乳製品、サクランボ、アーモンド、砂糖、種子、果物、ワイン、ホップ、飼料など幅広い農産物の生産者団体・輸出団体が、TPPと同水準、あるいはそれ以上の関税撤廃を要求。
     ◆自動車 米自動車政策評議会(AAPC)や全米自動車労組(UAW)が、日本の自動車市場には独自の安全基準など多くの非関税障壁があると指摘。また日本からの自動車や部品輸入に上限を設ける輸入割り当て(クオータ)の導入を提案している。さらに「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、新NAFTA)よりも強力な為替条項が必要だ」と主張。さらに強力な原産地規則によって米国自動車業界に有利な提案をしてくるだろう。
     ◆カーギル社など食料メジャー 日本の添加物規制など非関税障壁の撤廃を要求。また遺伝子組み換え作物やゲノム編集を含む「農業バイオテクノロジー製品」の貿易推進を協定に明確に位置づけるよう要求。
     ◆医薬品 米国研究製薬工業協会(PhRMA)は、日本が2017年に導入した新たな薬価算定制度について強い不満を表明。米国の製薬品に対する「差別的な措置」をなくすよう要求。

    ●関税削減だけではない

     米国企業は、物品だけでなくあらゆる分野で日本の市場を狙っている。米最大の業界団体、全米商工会議所のトップは「日米貿易協定を真のゴールドスタンダードにしたい」と述べ、特定の物品の関税削減に交渉分野を絞るのではなく、包括的な協定の締結をめざすよう日米両政府に促している。ここには特許などの知的財産や電子商取引、投資などをめぐるルールも当然入っている。
     日米貿易交渉は米国次第でいつでも始められる条件が整っている。自動車の高関税措置を避けるために他の多くの分野でなし崩し的な譲歩をしてしまわないよう、国会はもちろんわれわれ市民社会の側も強く求めていかなければならない。(アジア太平洋資料センター共同代表 内田聖子)