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    9年連続で引き上げに/公共工事の設計労務単価/末端労働者への波及が課題

     国土交通省が2月19日、2021年度の公共工事設計労務単価を発表した。全職種・全国平均で日額2万409円(今年3月から適用)。9年連続の引き上げとなり、昨年比で1・2%増、上昇に転じる前年の2012年度からは53・5%増となる。一方で、下請けで働く末端の建設労働者には、この額で支払われていないことが多く、その改善が課題だ。

     設計労務単価は、国や自治体が公共工事の予定価格を積算する際に用いる単価。「建設労働者本人が受け取るべき賃金」として国交省が毎年、都道府県ごと、51の職種別に設定している。

     末端の建設労働者にまで行き渡らない要因の一つに、元請けや、数次に重なる下請けの上位にある業者が、下請け代金を買いたたき、下請けや孫請けが適正に請求できないという実態がある。上位の業者は国の労務単価を確保しているように見せつつ、その他の必要経費分の値引きを強いる行為が横行しているという。その結果、下請け業者は従業員の賃金にしわ寄せせざるをえなくなるという構図だ。

     国交省も「下請け代金から必要経費を値引くことは不当行為」と問題視している。

     地場ゼネコンの下請けで、従業員3人を雇う事業主の男性(型枠大工・50代)は「必要経費を請求しても認められず、値引きされた。賃金を減らさざるを得ない事態。本気で廃業を考えている。新型コロナで仕事が減り、買いたたきが強まっている」と話す。

     公共工事でも同様のケースが見られるという。建設業での下請けいじめの是正は、喫緊の課題だ。