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    格差是正の流れを継続/連合の初回回答/二極化の中、中小支援へ決意

     2021春季生活闘争の連合の第1回回答集計(3月19日発表)は、定期昇給相当分込みの加重平均で前年同時期を278円下回る5563円となり、賃上げ率は1・81%と、2%を割り込んだ。組合員300人未満は1・84%で、千人以上の大手(1・8%)を上回っているのが特徴。同日の会見で、製造や流通など各部門の責任者が、二極化する交渉状況を報告しつつ、今後の中小の交渉追い上げへの決意を語った。

     663組合(127万人分)の回答を集約した。規模別でみると、300人未満が前年同期比458円減の4797円(1・84%)で、300人以上は5587円(1・81%)だった。

     いわゆるベースアップ分でみると、全体の加重平均は1685円(0・55%)となる。集計組合は昨年同時期より58組合少ない286組合。規模別で、300人未満は1430円(0・51%)で、内訳は百人未満の小企業が1791円(0・76%)と健闘している。

     神津里季生会長は春闘方針の柱である分配構造の転換を進めなければならないと述べたうえで、「中小の労組が、規模の大きい組合を上回る傾向が維持されている。賃上げの流れを止めない、そのことにこだわった結果だ」と述べた。

     

    ●次の焦点は中小

     

     19日の会見では、各共闘連絡会の責任者が交渉状況を報告した。業況が二極化する中、有額回答、定昇確保をめぐるせめぎ合い、前年並みや、それを超える交渉が報告された。

     金属製造業部門の高倉明自動車総連会長は大手51組合中32組合が賃金改善を獲得したとし、「共闘の相乗効果を発揮できた。継続的な賃上げにこだわった結果だ。人への投資の流れを途切れさせることなく継続できた。小さな規模の組合ほど高く、底上げ格差是正の流れが定着している。今後全ての組合で賃上げを獲得し、大手を上回る賃上げを進めていく」と語った。

     化学・食品・製造の酒向清JEC連合会長は、繊維、石油、素材、化粧品、外食用食品、ゴム製品などで厳しい状況にあるとし、賃金改善の獲得組合数は昨年比で半分程度であると報告。今後本格化する中小の交渉については「大幅ベア獲得の事例もある。できる限り前年の流れを止めないよう交渉を続けたい」と述べた。

      流通・サービス・金融の松浦昭彦UAゼンセン会長は、ホテル、レジャー、外食の業績が著しく悪く、金融や衣服関連も厳しい中、前年並みを目指してきたと話した。好業績の食品スーパーやドラッグストアなどでは「前年を上回る形で妥結している」と好調ぶりを強調した。

     インフラ・公益関連の坂田幸治電力総連会長は、収益が悪化した企業の組合でもほとんどが定昇を確保したと述べたほか、情報・通信、通信建設分野では昨年同水準の改善分を獲得し、電力の一部でも改善原資を獲得したと報告。この成果を中小の交渉につなげていくと決意を表明した。

     交通・運輸の難波淳介運輸労連委員長は、交通産業の厳しい交渉状況を説明し「人流は定期昇給を確保したうえで雇用確保に最善を尽くし、物流は人材不足対策として賃金・労働条件の向上に向けて粘り強く取り組む。今後の中小の交渉に向け粘り強く支援していく」と語った。

     

    〈写真〉厳しい中でも賃上げの流れ継続のバトンを、後続する中小労組につないだ(3月19日、都内)