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    沖縄レポート/戦跡土砂利用は人道に反する/辺野古新基地の埋め立て問題

     最初に報じられたのは昨年5月。沖縄防衛局が県に提出した辺野古新基地建設のための設計変更申請書に、埋め立て土砂の調達先として沖縄本島南部地区が新たに加えられていたことが明らかになった。

     南部は言うまでもなく、沖縄県民の4分の1が命を失った沖縄戦の最後の激戦地である。今も新たな遺骨が見つかり、DNA鑑定で身元を調べる取り組みが行われている鎮魂の地だ。遺骨を含む土砂が軍事基地になるのは人道上の大問題だとして沖縄で批判が沸き起こった。

     

    ●中止求めるハンストも

     

     活発に動きだしたのは、長年遺骨収集をしてきた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー(ガマを掘る人の意)」代表の具志堅隆松さんである。県庁前で3月1日から6日間のハンガーストライキを実施し、採掘事業の中止命令を出すよう玉城デニー沖縄県知事に求めた。

     ハンストは大反響を呼び、激励する人、行動を共にする人が集まり、賛同するハンストや集会が東京や米国にも広がった。署名は短期間に4万7648筆に達した。海外メディアも報道した。最終日の6日には玉城知事も訪れ、「頑張って手だてを探している」と具志堅さんに伝えたという。

     具志堅さんは17日に県議会などに要望書を提出し、「戦没者の血や骨粉を含んだ南部の土砂を遺骨とともに海の埋め立てに使うなど、人間の心を失った行為である」「県内のみならず国内外にもいる遺族の心を傷付ける重大な人道上の問題として南部からの埋め立て用土砂採取は断念すべきだ」と求めた。

     

    ●県は難しい判断

     

     辺野古新基地を容認している自民党も公明党も沖縄防衛局に同様の要請を行っており、市町村議会で次々と意見書が可決されている。ただ、豊見城市議会では、全会一致を目指して文案に「辺野古」の文言は入れなかったのに「採掘業者が風評被害に遭っている」という理由で反対多数となり、否決された。

     県議会は、具志堅さんと業者の参考人招致や現地視察を行うためとして、2月定例会会期中の提案が見送られた。

     現場は沖縄戦跡国定公園内で、自然公園法に基づく許可が必要だ。業者からの届け出を県は18日に受理した。30日以内に判断することになっているが、手続きが適正な場合に認めなかった前例はないという。日本で唯一の戦跡国定公園であることから何らかの理由付けを模索しているようだ。行政権行使として極めて難しい判断になる。

     

    ●基地建設の断念こそ

     

     しかし、そもそもの問題は戦跡の土砂を基地建設に使おうという政府の非道にある。沖縄戦から76年になろうというのに、沖縄は基地問題と重なって常に苦悩と分断を強いられる。県知事の行政としての判断がどうであれ、政府が辺野古新基地を断念することこそが問題の解決である。具志堅さんは4月5~9日に2度目のハンストを行い、同21日に東京に出向き政府交渉をする方針だ。(ジャーナリスト 米倉外昭)