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    「同性婚実現に改憲は不要」/市民団体がシンポ/民法改正の必要性訴え

     「同性婚を認めない民法は違憲」とした札幌地裁の判決(3月17日)を受け、改憲派が民法ではなく、憲法24条を変えるべきとの主張を強めている。これに対し、同性婚実現を目指す市民団体は「憲法改正は不要」と反論している。

     改憲派は憲法24条について「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立するとしており、条文が言う『両性』は『異性』を指す」という。

     同性婚の自由を求める市民団体、マリッジフォーオール・ジャパンは5月3日に憲法と同性婚についてシンポジウムを開き、「24条の『両性』は『当事者』という意味。憲法改正ではなく民法の改正こそ必要だ」と訴えた。

     

    ●家制度の理念根強い

     

     シンポで立命館大学の二宮周平教授が、戦前は家制度の下、戸主が家族の婚姻の権限を持ち、妻は法的にも「無能力者」とされていたと説明。戦後、新憲法が制定され「家制度の廃止や異性間の婚姻の自由、夫婦の平等が実現した。その経過を踏まえれば、24条の『両性』とは『当事者』を指す。札幌地裁判決でも、24条は同性婚を排除しないと明記した。憲法を変えなくても民法で同性婚を認める規定を作ることはできる。憲法改正の必要はない」と語った。

     当事者らでつくる市民団体フェアの松岡宗嗣代表理事は「(保守系の)政治家には家制度の理念が根強く残っている。それが同性婚へのアレルギーを起こしているのではないか」。

     「同性婚訴訟」(北海道弁護団)の須田布美子弁護士は「7割が同性婚に賛成という世論調査結果がある。社会は理解を示している。政治家が理解していないだけ。憲法改正ではなく憲法の趣旨に則った法律の改正を求める」と述べた。

     

    ●24条の起草者も認める

     

     憲法24条を中心に起草した連合国軍総司令部(GHQ)のベアテ・シロタ・ゴードンさんは晩年、憲法と同性婚について、こう語ったという。

     「起草当時は同性愛者の権利、結婚の平等については全く話に出ず、議論されていなかった。当時は想定していなかった。(今、考えると)24条は、男女間の結婚と同じように同性婚を保護するように解釈されるべきだと思う」

     同シンポにベアテさんの娘、ニコル・ゴードンさんが参加し、ベアテさんの発言を紹介した。

     

    〈写真〉エッセイストの小島慶子さんが司会を務めた(左上、5月3日)