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    〈働く現場から〉コロナ禍で窮迫する外国人/ジャーナリスト 東海林智

     「こんな光景、ちょっとみたことがないです」

     連休期間中の5月3、5日の両日、新型コロナウイルスの影響で生活に困窮する人々を支援する「ゴールデンウィーク大人食堂」が東京・千代田区の聖イグナチオ教会でが開かれた。会場には若者から高齢者、親子連れまで多様な人々が列を作った。

     中でもひときわ目を引いたのは、外国人の多さだ。相談の順番を待つ人の7割近くを占めていた。冒頭の言葉は、大人食堂に言語ボランティアで参加していた女性が発したものだ。これまで通訳などで外国人の支援をしてきたが、こんなに外国人が並んでいるのは見たことがないという。女性は「何か大変なことが起きているのでは」と不安そうに語った。

     

    ●ここまで多いとは…

     

     大人食堂は、この間、生活困窮者を支援してきたNPOなどで作る新型コロナ災害緊急アクション、労組や弁護士などで作るコロナ被害相談村実行委員会などが主催、医師などによる感染対策を万全にして相談活動を行った。

     2日間で食料や弁当などの物資を受け取った人は658人に上った。このうち329人が生活や労働などの相談をしており、外国人は145人だった。昨年末の同様の取り組みでも見かけることはあったが、関係者も「ここまでの人数になると、外国人の間で一体何が起きているのか心配になる」と話した。

     

    ●仮放免者が困窮?

     

     アフリカ出身者などを支援しているボランティアは、相談に来た人の顔ぶれを見て「これまでアフリカ出身者のコミュニティーでみんなの相談を受けてきた人が相談に来ている。外国人同士の互助機能が難しい状況になりつつあるのでは」との見立てを述べた。

     背景には、日本の公的支援を受けられなかったり、難民申請を繰り返しても認定されずに就労許可がなく働けなかったりする事態があるものと見られる。特に入管に収容されながら、コロナ禍で仮放免という形で出された外国人の困窮は深く、相談をした9割は仮放免だったという。これまでなら、こうした人々を支えた同胞のコミュニティーも同様に困窮しており、支える余裕がなくなっていることが浮かぶ。

     

    ●所持金も尽きて

     

     5日の相談に訪れたのは、ナイジェリア28人▽カメルーン17人▽ミャンマー16人▽エチオピア7人▽ネパール4人▽イラン2人――など17カ国に上った。反貧困ネットワークの瀬戸大作事務局長は「外国人は経済的困窮が深まる中でも放置されているのに近い状態だ。今晩寝る場所がない、所持金も尽きた……そんな相談が相次いだ」と憤る。外国人支援の現金給付は2日間で約300万円に上ったという。それだけ、急迫した人が多かったということだ。

     

    ●連帯示した2日間

     

     もちろん、日本人の困窮も深い。コメなどの支援物資を受け取った20代の女性は「助かります。これで食事ができます」と涙をためた。感染拡大で派遣の仕事が激減しているという。「仕事のない日は一歩も外に出ません。食事を食べるのは仕事がある日だけ。ない日は節約のために食べずにずっと寝ています」。あふれそうになる涙を必死に堪えて礼を述べた。

     コロナの感染拡大の下でも「連休中に困窮する人々を放っておけない」と大人食堂開催を決めた実行委員会や、急な食料支援の要請を受けて山にワラビを取りに入るなど食料集めに奔走した農民連(農民運動全国連合会)、大変な状況の中で集まった医療従事者、多数のボランティア、そして困窮者……。コロナ禍を生き延びる人間の連帯を示した2日間だった。

     

    〈写真〉食料配布の準備をするスタッフたち(5月3日、都内)