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    育児・介護休業改正法案が成立/男性の取得向上へ要件緩和/「出生時育休制度」を創設

     育児休業の取得を促す改正法案が6月3日、成立した。従業員への育休取得の意思確認を事業主に義務付けるとともに、分割取得の機会を広げ、男性については子の出生後8週間で最大4週間の休暇を取れるようにする。

     改正案の柱は主に三つ。一つが、従業員への「声かけ」。妊娠・出産を申し出た男女の労働者に育休の制度を伝え、取得するかどうかの意思確認を行うよう事業主に義務付けた。管理職が声をかけることで取得しやすくするのが狙い。解雇など不利益取り扱いを禁じている。

     二つめが分割取得。子の出生後8週が過ぎて以降、1歳になるまでに1度しか取得できなかったのを、分割して再取得できるようになる。夫が一度取得した後に復職し、妻が職場復帰するタイミングで再取得をすることなどを想定する。

     子が1歳以降、保育所に入れないなどの場合、現行法でも再取得できる。法改正では、夫と妻とが交互に取得できるよう柔軟な仕組みとすることを決めた。

     三つめが、子の出生後8週間以内に最大4週間休むことができる「出生時育児休業」制度の新設だ。申請期限を最短2週間とし、期間内で2度の取得を可能とするなど、要件緩和した。労使協定を結び、本人が希望すれば、休業中でも就労できる規定も設けた。

     有期雇用の労働者にとって、育休取得のハードルは高い。今回の改正では、勤続1年以上という現行の取得要件を撤廃する。ただ、子が1歳6カ月になるまで期間満了になることが明らかでないこと――という要件は残した。

     

    〈解説〉質向上への通過点に

     

     改正法案は全会一致で成立した。今回の改正は不十分ながらも、男性の育児休業取得にとって、前向きな一歩というのがおおかたの評価だろう。

     2019年度に妻が出産した男性のうち、育休を開始した割合は7・48%。政府の「2020年までに13%」という目標の達成は厳しい。政府は昨年、少子化社会対策大綱で「2025年までに30%」という、これまでの進展から見て高めの目標を設定した。

     改正内容は、特に利用の希望が高い、出生後8週間について使いやすくしたことについては評価されている。ただ、休業中でも就労できる要件を緩和したり、コマ切れ休業も可能となるなど、政府目標達成のための改正ではないかという疑念も否めない。

     審議会で有識者から意見が出されたように、1人が1日でも取得すれば向上する「取得率」だけでなく、取得した日数について目標を設定し、必要な施策を整備するなど、育休の質の向上も必要。今回の法改正をそのための通過点とすることが求められる。