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    「コロナ失業」が死に直結/民医連事例調査から

     全日本民医連が行った2020年「手遅れ死亡事例調査」(6月9日発表)では、新型コロナ禍の下で失業し、生活が困窮したために、適切な時期に治療を受けられずに亡くなった人の生活状況を報告している。

     

    ●収入なく手遅れに/派遣労働者の男性

     

     60代男性は派遣労働者として、ホテルの客室の清掃の仕事をしていた。新型コロナ禍の影響で宿泊客が減少。上司から「感染が落ち着くまで出勤停止」を指示されたという。腰から右足にかけてしびれと痛みがあったが、収入がなく、医療費負担への心配から受診が遅れた。

     症状が悪化し、昨年4月にようやく受診したが、検査により肺がんがリンパ節などにも転移していることが判明。治療のかいなく8月に亡くなった。

     

    ●「お金が払えない」/日本語講師の50代男性

     

     1人暮らしをしていた50代男性は正規雇用で外国人に日本語を教える講師として働いていた。新型コロナ感染拡大の影響で昨年3月ごろから休業を指示され、6月の初診時には無収入だった。他の病院で受けていた糖尿病の治療を中断。治療薬を1カ月ほど飲んでいなかったところ、嘔吐(おうと)が続き受診した。

     男性からは「『受診しているがお金が払えない』と両親に伝えてほしい」との訴えがあったため、職員が実家に連絡。入院を強く勧めるが、男性は「とにかく自宅に帰りたい。内服薬を出してほしい」と入院を拒んだ。

     初診から12日後に警察から不審死の連絡があり、男性の死亡が判明。警察によると「死後10日ほど経過していた」という。