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    「月15万円。生活苦しい」/今年度の最低賃金/女性や若者が引き上げ訴え

     今年度の最低賃金改定の審議が始まるのを前に、最賃ぎりぎりで働く女性や若者が生活実態を語った。「手取りは月15万円。生活が苦しい」「子育てや親の介護ができるのか不安」と大幅な引き上げを訴えた。全労連などでつくる国民春闘共闘委員会が6月11日に会見を開いた。

     

    ●今年は引き上げを/無期雇用非正規の女性

     

     出版取次会社の下請けで書籍配送作業に就く鈴木真貴さん(47)は、時給制の無期雇用契約で働く。勤続9年だが時給は最賃と同額の1013円(東京)だ。週6日働き、手取りで月約15万円。会社の指示で勤務時間の短縮を迫られることもあり、月12万円ほどになることもある。今年4月まで交通費の支給もなく、同僚の中には節約のために自転車や徒歩で通勤する人、昼食を我慢する人が多いという。

     鈴木さんは「高齢の両親の介護のために非正規で働かざるを得ない。生活できない。苦しい。今年は最賃を引き上げてほしい」と話した。

     

    ●1人暮らしできない/非正規公務員の男性

     

     国の関連機関で非正規公務員として働く杵島歩さん(33)は、雇い止めと再契約を繰り返しながら13年間働いている。現在の職場では勤続2年、来年3月には雇い止めされる。

     賃金は日給月給制で、時給換算すると1158円。出勤日が多い月の収入は19万7千円だが、少ない月は約16万円に減る。社会保険料や所得税など約4万円引かれ、少ない月の手取りは約12万円になる。「実家から通勤している。この低賃金で1人暮らしは難しい。結婚、子育て、親の介護ができるのか、不安しかない。公務員は最賃が適用されないが、非正規職員の賃金ベースになっている。大幅な引き上げを求める」

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     黒澤幸一事務局長は、今年度の骨太方針原案が最賃について「より早期に全国加重平均千円」を目指すと示したことに触れ、「働いても自立して生活できない実態がある。『全国加重平均千円』では足りない。コロナ禍で中小企業は危機的な状況にある。政府は特別の支援策を行って、今年は大幅に引き上げるべきだ」と語った。

     

    〈写真〉「時短を迫られても生活できる最賃にしてほしい」と話す鈴木さん(右、6月11日、都内)