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    最賃額との差、約2倍/大分県労連/コロナ禍で初の生計費調査

     大分県労連(全労連の地方組織)は7月8日、新型コロナ禍の下での初の最低生計費調査の結果を発表した。実際に生活に必要な経費を積み上げるマーケットバスケット方式で試算したところ、若者が「ふつう」に1人暮らしをするには時給約1500円が必要との結果が示された。大分県の最賃額(792円)の約2倍の水準だ。

     最低生計費調査は、生活実態、持ち物、市場価格の三つの調査によって、憲法25条が示す「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な費用を積算する。持ち物調査では、原則7割以上の所持率の耐久消費財を生活必需品とし、法定耐用年数で割った金額を費用と換算する。1483人から回答を得た。

     大分市内で25歳の若者が1人暮らしをするために必要な金額は月約26万円という試算結果になった。中央最賃審議会で用いられる労働時間(月173・8時間)で時給換算すると1504円。大分県の最賃額の約2倍という結果になった。

     月173・8時間は週休2日の場合だと、お盆も年末年始も休まない働き方になる。ワーク・ライフ・バランスに配慮した月150時間で換算すると1743円となる。

     調査を監修した石井まこと・大分大学経済学部教授は「大分県の30歳未満の年収は300万円未満が約5割。低賃金で生活を回すために医療費、交際費などでの節約が行われ『社会参加の格差』が拡大する。コロナ禍は公助を整備する機会だ。最賃の大幅引き上げのために地方から変革を起こすことが必要だ」と述べた。

     調査に関わった大分大学の学生も同日の会見に参加し「最賃が低すぎることが分かった」などの感想を語った。

     

    ●関わった学生の声

     

    ◇大学4年生の男子学生

     就職活動中だが、求人募集の初任給は19~20万円が普通。最低生計費調査に参加して、その金額では足りない、低すぎることが分かった。コロナ禍の中で就職できても生活していけるのか不安。

     

    ◇大学4年生の女子学生

     私も今、就職活動をしている。(調査結果を踏まえると)初任給で1人暮らしをするには必死にならないといけないと不安に感じた。最低限の物を買うだけで、貯蓄は難しいのではないか。最賃が1500円になったら貯金したい。

     

    〈写真〉全国で最低生計費調査を監修する中澤秀一准教授は「大分の最賃は最低額だが、必要な生計費の結果は最高額になった」と話す(右、7月8日、都内)