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    労働時評/組合つぶしを許すな!/労働委員会で「熱き審問」

     「組合つぶしは許さない」と、労働委員会で不当労働行為救済の「熱き審問」が行われている。日本最大の不当解雇撤回闘争のJAL、「ブラック企業」のサカイ引越センター、個人請負の東電系列ワット争議に焦点を当てた。

     

    ●早期解決へ支援拡大を

     

     JAL165人の解雇と団交拒否を審議する東京都労働委員会の第1回審問が7月13日に開始され、都労委が不当労働行為の救済に強い意欲を表明した。

     救済申し立てはJAL被解雇者労働組合(JHU)。年齢が理由で非組合員となったパイロット争議団前団長の山口宏弥氏ら3人が4月に組合を結成。乗員組合、キャビンクルーユニオンなどの「統一要求」に準じて「希望者全員の復職」「復職が適わない者の地上職勤務」や不利益補填(ほてん)・解決金などの要求で団体交渉を申し込んだ。しかし会社が拒否したため、5月に「解雇争議全体の解決に資する」ために、不当労働行為として都労委に救済を申し立てていた。

     JALは2010年12月の大晦日(みそか)、パイロット81人、客室乗務員84人の整理解雇を強行。最高裁は15年に解雇容認の不当判決を下したが、16年9月に違憲違法の不当労働行為と断定した。しかし会社の不誠実な対応で争議はいまだ未解決のままである。

     山口委員長は審問の意見陳述で、会社は最高裁で違憲違法と断罪されながら、解雇から10年半にパイロット386人を採用、客室乗務員は6205人を採用したが、「原告では一人も乗務復帰者はいない」と批判。解雇の狙いが「モノ言う労働者の排除」「労組の弱体化」であったことが証明されたとして、争議の早期解決への審理を求めた。

     都労委はJAL争議のこれまでの経過などを踏まえつつ、「救済命令か、和解による実質的解決の方向もある」とし、第1回審問で踏み込んだ解決方向を示した。会社側にも同じ内容を示した模様である。

     都労委審問には争議団員やJAL争議支援の組合関係者、栃木、東京、神奈川、京都、大阪などの支援者が多数詰めかけた。争議支援も東京や神奈川などで不当解雇撤回オール共闘として運動が広がっている。

     JAL争議では自民を含む超党派20人の国会議員が都労委に早期解決の要望書を提出し、国際労働機関(ILO)も解決交渉を勧告。元国交相や厚労相も解決を促し、赤坂裕二社長も早期解決を公言している。

     今後、JHUと会社との団交も8月4日に予定され、都労委の第2回審問も9月に予定されている。日本最大のJAL不当解雇撤回闘争。早期解決へ支援共闘の拡大が求められる。

     

    ●「やり得」を許すな

     

     「業界大手のサカイ引越センターは組合つぶしの不当労働行為を止め、ブラック企業のような低賃金・長時間労働改善を」と6月29日、全労連・全国一般神奈川地本とサカイ引越センター分会が神奈川県労働委員会に救済を申し立てた。

     同社(本社・堺市)は正規従業員6113人、臨時従業員1万911人で、全国に190支社・支店がある。組合は川崎市宮前支社に勤務する20代労働者6人で5月に結成した。

     訴えでは「労働者使い捨て」という「ブラック企業」の実態を浮き彫りにしている。賃金は基本給6~8万円と超低額で諸手当が10数項目。神奈川県の現行地域最賃(1012円)を下回る可能性もあり、労基署が精査中という。サービス残業や「労災隠し」も告発している。

     組合攻撃は露骨だ。会社は組合公然化の4~5日後から全国で他の労働者への個人面談を行い、「組合に入ったら残業できないぞ」などとどう喝した。

     しかも会社は組合結成通知の2~3日後、組合員だけを除外した業務用LINEグループをつくり、配車選別の報復で手取りは約10万円に激減された。

     さらに分会長(25)には、上司の指示に従って決着済みの業務上事故を「事故隠蔽(いんぺい)」に仕立て、異例の「本社研修」を画策。6月には「懲戒処分通知書(けん責)」を交付してきた。

     組合は謝罪文掲示など救済を申し立てた。水谷正人・神奈川地本委員長は会見で「組合排除、組合つぶしはマニュアル化された老かいなやり方だ。不当労働行為のやり得を許してはならない」と強調した。

     

    ●今後に重大な影響

     

     東京電力系列のワットラインサービス社が個人請負契約を打ち切ったのは、組合つぶしの不当労働行為だとして7月5日、組合が都労委に救済を申し立てた。

     訴えは全労連・全国一般東京地本と計器工事関連分会(13人)。東電電気メーター交換工事の個人請負労働者で18年に分会を結成。20年3月に都労委から「労組法上の労働者」として団交権が認められたが、会社は団交拒否を続けている。

     親企業の東電パワーグリットは、都労委命令と同時期の20年3月からワットラインへの発注量を減らし、組合員は年収7割減とされた。さらにワットラインは今年3月、組合未加入者などに法人を設立させ、今後、個人請負労働者とは契約を結ばないと通告。組合員には解雇に相当する契約打ち切りを強行した。

     組合は「個人請負労働者の雇止めは組合排除の不当労働行為であり無効」と都労委に救済申し立てを行った。背景資本の東電にも争議解決を迫る方向である。

     鷲見賢一郎弁護士は「東電系列ワットラインサービスのような団交拒否や組合つぶしが許されれば、今後増大が予測される雇用によらない働き方の労働者性と保護拡大にも影響する重大争議だ」と強調した。(ジャーナリスト・鹿田勝一)