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    7割が女性役員ゼロ/民放労連が初のラジオ局調査/「不均衡は社会に影響を及ぼす」

     テレビやラジオ局の経営の意思決定の場に女性がほとんどいないことが、民放労連の調査で分かった。ラジオ局への調査をこのほど初めて行い、先行して実施したテレビ局への調査と同様、取締役などの女性役員が1人もいなかった局が全体の7割に上る。同女性協議会は「メディア内でのジェンダーバランスの不均衡は視聴者の意思決定に影響を及ぼす」と改善を求めている。

     昨年4月からの1年間で全国98社を対象に実施した。取締役など全体の役員総数1051人のうち、女性役員は29人で3%にも届かない。女性役員がゼロの会社は72社で全体の7割を占める。(グラフ)

     民放テレビ局の調査でも、経営に携わる女性役員がいない会社は127社中、91社で全体の7割。ラジオ局と同様の結果だった。

     調査結果について、民放労連女性協議会の岸田花子副議長は「テレビもラジオも女性役員のいない会社が多すぎる。女性の意見が組織運営に反映される『クリティカル・マス(最低限必要な人数)』のポイントは3割と言われるが、まだまだそこへ向かうスタートラインにもついていない」と指摘する。

     調査のコメントでは、国の第5次男女共同参画基本計画の「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」という目標が達成されなかったことに言及。

     「社会全体に固定的な性別役割分担意識が存在することが要因の一つとして挙げられている。メディア内でのジェンダーバランスの不均衡は社会全体の意識に波及する」と述べ、改善を求めている。

     

    ●結果を提示し変えたい

     

     あるラジオ局で長年働く、女性協議会常任委員の伊東紀子さんは、調査結果について「肌感覚では分かっていたが、改めて数字を見るとひどい状況だなと感じた」と話す。女性役員が少ないのは、女性社員が子育てや介護などから長く働き続けられない状況があるからだ。

     入社した90年代当時のラジオ局内では、少数とはいえ、女性社員がいきいき働き続ける雰囲気があったと伊東さんは語る。「以前は自分の意見を率直に言える環境だったが、気がつけば周り(他業種)に置いていかれ、古い体質が残る労働環境になってしまった」と振り返る。

     放送業界はかつて花形の仕事だったが、最近では若い人がすぐに辞めていく職場となった。

     伊東さんは、長時間労働のまん延や、多様な意見が反映されない社内環境を変えていきたいと述べ、「今度は年齢構成も加えて調べたい。20、30代が少ないのではないか。女性社員も少ない。働き続けられる職場にしていきたい。『どうせ(私たちの主張は)伝わらない』と諦めそうになるけれど、地道に調査データを提示し訴えていきたい」と語る。