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    〈働く現場から〉キャバクラ接客女性は労働者/ジャーナリスト 東海林 智

     キャバ嬢は労働者――。

     キャバクラで働く接客従業員が、労働契約で働く労働者にあたるとして、店側に時間外や深夜の割増賃金など約1100万円の支払いを求め、さいたま地裁に訴えていた裁判で、両者の契約が労働契約であったことを確認し、店側が解決金を支払うことで和解した。

     安倍・菅政権下で、「柔軟な働き方」として、労働者の個人請負化がギリギリと広がる中、労働者に当たる者をたやすく個人請負とすることにくぎを刺す和解となった。

     

    ●ボーイの指示受け働く

     

     原告の女性(30)と代理人の弁護士、女性の加盟する「キャバ&アルバイトユニオンOWLs」が10月14日、記者会見して和解内容を公表した。弁護士によると、キャバクラの接客従業員を労働者と認めた事例は他に見当たらず、極めて珍しいという。

     原告代理人らによると、訴えていたのは埼玉県越谷市のキャバクラで働いていた女性。女性は2016年5月から19年3月まで同店で働いていた。出勤のたびにタイムカードを打刻し、退勤時間は店の正社員が出退勤簿に手書きで記録していた。平日は午後9時から翌日午前4時まで、週末は午前5時まで働いた。

     店舗では、接客については店のボーイから「あそこの席に着いて」「ワイワイ系の客だから盛り上げて」など具体的な指示を受けていた。また、女性は指定された時間に出勤し、店が指定した衣装の着用を義務づけられていた。

     だが、労働基準法に定められた午後10時以降の深夜労働の割り増し賃金分(賃金の25%以上)や残業分の割り増し賃金(同)などが支払われなかった。客がいなくなったなど店の都合で、定刻(午前4時など)より早い時間で勤務を切り上げる「早上がり」になった場合も、残りの時間の賃金は支払われなかった。つまり、労働者として扱われていなかった。

     また、「厚生費」の名目で出勤ごとに千円、「送り代」として1回千円、「修繕費」の名目で賃金の総支給額の5%が、天引きされていたという。

     

    ●早上がりに賃金補償

     

     女性はこうした扱いに疑問を持ち、労組に加入。労組は店と交渉したが、店側は「双方の契約は雇用ではなく委任」と個人請負で働いていたと主張、残業代の割り増しの支払いなどを拒否したという。店側は労働審判でも主張を変えず、裁判に移行した。

     和解には、契約が労働契約であったことを確認、解決金は深夜割り増しや時間外割り増し、早上がりなどに係るものだと項目を明記された。原告の女性は「多くのキャバ嬢は労働者なのに個人請負として扱われている。労働者として労基法の適用を受ける存在であることを示せた」と意義を語った。山田聡美弁護士は「店側の指揮命令を受けるなど労働者として実態は明らかだった」と話した。

     同弁護士が言うように、店側の指揮監督下にあったことや勤務時間、場所の拘束性など労基法上の労働者の判断基準を満たしており、裁判所もその立場に立って和解を勧めたものと見られる。

     この和解の中でもう一つ注目したいのは、「早上がり」の賃金補償の項目だ。これは、このケースに限らず、労働者として働いていても補償されないケースが目立っている。特に居酒屋など流通・サービスのバイトが早上がりさせられ補償のないケースが目立つ。「シフト制」という、人を部品のように扱うため、このようなやり方が幅を利かせているのだ。労働側は今回の和解内容を活用しない手はない。